令和8年度環境省「良好な環境の創出・活用推進事業」の採択にあたり

日本名水百選「金沢清水湧水群」が生み出す
ウォーター・エクスペリエンスによる自然保全モデル事業の概要

日本名水百選「金沢清水湧水群」が生み出す<br>ウォーター・エクスペリエンスによる自然保全モデル事業の概要

環境省「令和8年度良好な環境の創出・活用推進事業」とは

地域の豊かな自然や水環境を「守る」だけでなく「活かす」ことで、持続可能な地域づくりを目指す環境省の支援事業です。藻場や干潟の保全、観光利用、里海づくりなどのモデル事業に対し、資金支援などが行われます。
地域の環境資源(水や自然)を保護・回復させることと同時に、それを地域の活性化につなげる好循環の実現を目的としています。具体的には、以下の3つのモデル事業に分類されます。

1. 良好な水環境保全・活用モデル事業
湧水や水辺など、地域の水環境の保全や適正な利活用を図る取り組みです。
2. 戦略的「令和の里海づくり」基盤構築支援事業
干潟や藻場の保全・再生を行い、持続可能な里海(人が自然と共生する沿岸海域)の整備や実施体制づくりを推進します。
3. 良好な環境を活用した観光モデル事業
地域の豊かな自然や環境資源を活かした、エコツーリズムなどの持続可能な観光モデルを創出します。
(当社はこちらに該当します。)

◼︎当社の事業

1,背景・目的
〈金沢清水湧水群の学びと体験から持続可能な自然保全へ〉

八幡平市は、火山地形に由来する豊かな水資源と、日本初の商用地熱発電所という再生可能エネルギー基盤が確立されており、これらが共存する国内でも稀有な自然条件を備えた地域である。
本事業の実施主体は、2011年東日本大震災以降約9年間にわたって地域支援活動に携わり、被災地の姿から自然再生の必要性と自然保全の重要性を改めて認識した。この原体験を契機に、東北の地において持続的な自然保全の仕組みを自らの事業として構築することを決意した。支援活動が終了した2020年には、日本名水百選「金沢清水湧水群」の天然水と地熱発電電力を活用したオーガニックビール醸造(2022年有機JAS認証取得)を開始し、「水」を自然環境の保全の指標として捉えてきた。

しかし、近年、気候変動の影響と考えられる湧水量減少の兆候が見られる。長期的な水環境保全のためには、継続的な調査・分析と、その成果を地域全体で共有する仕組みの構築が不可欠である。以上を踏まえ、本事業では、金沢清水湧水群の「天然水」を軸とした学びと体験を提供する「ウォーター・エクスペリエンス」による自然保全モデルの構築を提案する。
「ウォーター・エクスペリエンス」とは、あらゆる人が現地において、水の本質、その保全について、体感を通した体験によって理解を促すプログラムである。多角的な調査・分析により水の科学的知見を得るとともに、水源を訪れ、水環境に触れ、実際に水を味わう。さらに、水が生命・地域環境・産業に果たす役割を総合的に学ぶ。本事業の成果は、「ウォーター・エクスペリエンス」による体感的体験を通じて、自然環境保全に対する主体的な意識と行動変容を育むことにある。
本事業の舞台となる当該敷地は、かつて岩手県最大級の釣り堀施設として利用され、金沢清水湧水群から毎時約450tの湧水が流れ込むウォーターガーデンとなっている。しかし、モルタル構造の池には、この地域にはこれまでに無かった夏季の異常な猛暑による水質汚濁と藻類繁茂など、気候変動の影響が顕在化している。こうした現況を踏まえ、ウォーターガーデンを単にビオトープとして整備するのではなく、ビオトープ化に先立つ水環境のあり方を検討するプロセス自体を学習プログラムとして実装する。本調査を通じて、「自然共生サイト」認定を視野に入れた実践的ノウハウを蓄積する。

岩手山の天然鉱泉水 日本名水百選「金沢清水湧水群」

岩手山の天然鉱泉水 日本名水百選「金沢清水湧水群」

金沢清水湧水群は、7つの湧水口を持つ名水群であり、「7つの頭を持つ龍」の伝説が残されている。1985年には環境省の「日本名水百選」に選定され、水質だけでなく、人々の暮らしや地域文化との関わりも評価された。また、この水源周辺の丘からは縄文土器が多数出土しており、数千年前から人々がこの水と共に暮らしていたことがうかがえる。

全体構造図
〈ウォーター・エクスペリエンス観光自然再生モデル〉

天然水を軸とした学びと体験を提供する

全体構造図〈ウォーター・エクスペリエンス観光自然再生モデル〉

金沢清水湧水群の地域のアイデンティ確立フロー図

金沢清水湧水群の地域のアイデンティ確立フロー図

2,実績

製品開発・事業展開の状況
〈地域の自然観と日本文化を基盤としたオーガニックビール〉

◼︎日本初の有機JAS取得のサステナブルオーガニックビール

日本名水百選「金沢清水湧水群」の天然水を仕込み水とし、地熱発電による電力を醸造時の電力として活用した有機JAS認証オーガニックビールを醸造している。天然水と再生可能エネルギーを組み合わせた醸造モデルは、世界にも類を見ないサステナブルな価値を備えたビールである。

◼︎地域資源を象徴するブランド展開

地域由来のビールとして「ドラゴンアイ」という製品名のオーガニックビールを醸造している。
「ドラゴンアイ」とは、八幡平山頂近くの鏡沼で雪解け時期のみ現れる神秘的な自然現象である。残雪とブルーの水面が、まるで巨大な龍の瞳のように見えることから名付けられたものである。春の幻の絶景として国内外から観光客を集める八幡平一の観光スポットである。「ドラゴンアイ」は地域の象徴を体現するブランドとしての役割を担っている。

◼︎日本由来の発酵文化を活かした製品開発

日本の発酵文化を支えてきた清酒酵母に着目し、その可能性をビール醸造へと展開する研究開発に取り組んだ。一般にビールはビール酵母を用いて醸造されるが、本取組では清酒酵母のみを使用する独自の醸造技術を確立し、国内初となる製品化を実現した。本製品は、日本酒醸造の系譜にある酵母と、地域の天然水という自然資源を活かすことで、日本の水と発酵文化を体現する製品として評価を得ている。伝統的発酵技術を現代のクラフトビールへ応用することで、日本由来の発酵文化を新たな形で継承・発信するものである。

◼︎国内外のオーガニック市場へ

これらの製品は、第三者からの客観的な評価および販売実績がある。具体的には、全国的なビール品評会であるインターナショナルビアカップにおいて受賞歴があり、オーガニック市場の大手流通である 株式会社ライフコーポレーション「ビオラル」や、イオン株式会社「ビオセボン」において、オリジナルビールの製造実績がある。さらに、定番ビール「ドラゴンアイ」は、コンビニエンスストアのローソンに採用されており、地域性やストーリー性を持つ商品として一定の市場評価を得ている。現在、国内外で流通しており、今年度には北米市場への輸出が決定し、海外展開を本格的に開始する。

◼︎本事業との関連

本事業は、水を単なる原料ではなく、地域の物語や自然観、そして日本文化を伝える媒体として位置づけている。その取組とこれまでに蓄積してきた醸造の知見を「天然水×ビール醸造」として、「ウォーター・エクスペリエンス」の学習プログラムとして体系化する。
本取組は、水資源の価値化と再投資を両立させる基盤として機能しており、本事業の実現可能性を担保するものである。

ドラゴンアイ 商品紹介

ドラゴンアイ 商品紹介

実施地と金沢清水湧水群の関連図

実施地と金沢清水湧水群の関連図

3,今後の展開

◼︎初年度 2026年6月から2027年3月

〈金沢清水の多角的価値の調査と研究〉

・金沢清水の水構造解析-アクアフォトミクスの科学的分析による水の可視化など
・金沢清水をとりまく自然環境の調査-岩手山の火山地形・湧水形成の地形条件など
・水循環の環境調査-湧水位置・水量変化・季節変化・季節変化など
・ビールと水の関連調査-発酵に伴う特性調査と比較
・ビオトープの基本設計-生物多様性を伴う当地ビオトープの価値調査
・ウォーターエクスペリエンスの学びコンテンツの作成-トライアル研修会の実施

◼︎次年度 2027年4月から2028年3月

〈調査・研究の成果をコトにうつす〉

・前年の調査の深掘り
・ウォーターエクスペリエンスの学びコンテンツの作成と実施
・良好な環境ツーリズムの近隣波及の実施
・良好な環境の創出に際して近隣への相互理解の推進
・映像、画像制作
・PR活動

以上のような方針と工程を経て、金沢清水湧水群をとりまく環境を多角的に調査し、地域の価値として再認識できる活動にしていきたいと思っています。
引き続き、岩手県八幡平市の良好な環境の創出にご協力お願いします。

2026年5月21日
株式会社太極舎 代表 岡部泉